プロダクト人材
PdM不足が解消しないのは、求人票が広すぎるから
PdMの募集を出し続けているのに、採用が決まらない。その間もロードマップは遅れていく。この記事は、そういう状態にある発注側の企業に向けて書いています。
結論を先に書くと、PdM不足は採用だけでは解けません。採用は打ち手として正しいのですが、効き始めるまでの時間が最も長い手段です。事業がいま止まっているなら、それと並行して打つべきものがあります。
募集を出しているのに、PdM不足が解消しない
現場で起きていることは、たいてい次のどれかです。
- そもそも書類が来ない。 半年出しても母集団が形成されない
- 「PM経験あり」の中身が違う。 受託開発の進行管理やPMOの経験はあるが、プロダクトの方向を自分で決めた経験がない
- 良い候補ほど競合する。 面談まで進んでも、条件や事業フェーズの魅力で他社に決まる
- 決めきれない。 「この人でいいのか」を判断できる人が社内におらず、選考が長期化する
これらは採用担当の努力不足ではありません。PdMは職種として新しく、経験者の絶対数が少ない。そこに内製化の流れが重なって、需要だけが増えている状態です。
問題は、この状況に対して採用という一手だけを打っていることにあります。
採用は、募集要項の作成から入社・立ち上がりまでを含めると、効果が出るまでに数ヶ月から半年かかります。一方で「PdMがいなくて困っている」という問題は、たいてい今週の意思決定が止まっているという形で現れます。
いま止まっているものを、半年後に効く手段だけで解こうとしている。 これがPdM不足が長引く一つ目の理由です。
求人票を書いているのは、いま溺れている本人
二つ目の理由は、もう少し構造的です。
PdMが不在の会社では、その役割をCTOや事業責任者、あるいは代表が兼務しています。そして求人票を書くのも、その兼務している本人です。
自分がいま何をしているかを書き出すと、こうなります。
- 事業の方向と、どの市場を取るかの判断
- 顧客の要望を聞き、何を作るかを決める
- 要件を書き、開発チームに渡す
- 優先順位をつけ、ロードマップを引く
- 営業やCSからの要望を裁き、期日を約束する
- リリースの可否を判断する
- 数字を見て、次に何をするかを決める
これがそのまま募集要件になります。悪意はありません。実際にその全部を一人でやっているから、そう書くしかないのです。
しかし、この要件を一人で満たす人は、すでにどこかの事業会社で中核を担っています。中核を担っている人は、転職市場にほとんど出てきません。
つまり求人票は、市場にほぼ存在しない人を定義してしまっている。母集団が形成されないのは当然です。
さらに厄介なのは、ここから抜け出しにくいことです。
-
採用が決まらない
兼務者はプレイヤーとして走り続けるしかない。
-
兼務者の負荷が増える
目の前の意思決定に追われ、要件を見直す時間が取れない。
-
求人票が更新されない
全部入りのまま募集が続き、さらに決まらない。
要件を分解して緩める判断ができるのは、その仕事の中身を知っている兼務者だけです。ところがその兼務者に、いちばん時間がない。PdM不足は、放っておくと自分で自分を強化する構造になっています。
採用できても、プロダクトが動き出さないことがある
三つ目は、採用が決まったあとの話です。入社したのに、思ったほどプロダクトが動き出さない。原因はスキル不足ではなく、次のどれかであることが多いです。
- 意思決定の権限が渡っていない。 肩書きは渡したが、最終判断は引き続き経営が持っている。PdMは調整役になり、決める人は増えていない
- ドメイン知識が移っていない。 顧客のこと、これまでの経緯、過去に何を試して何がだめだったか。これらが兼務者の頭の中にあり、渡されていない
- 既存の意思決定者が残ったまま。 誰に確認すれば決まるのかが曖昧になり、かえって遅くなる
採用は必要条件ですが、十分条件ではありません。 人を採るだけでは、意思決定の構造は変わらないからです。
裏を返すと、ここに手を入れられれば、採用が決まる前でも事業は動かせます。
PdMの仕事を3つに分解する
兼務者がやっている仕事を、性質で3つに分けます。この分解が、この記事でいちばん重要な部分です。
| 分類 | 具体的な作業 | 外に出せるか | 出したときのリスク |
|---|---|---|---|
| ① 決める | 何を作らないかの決定、優先順位の最終判断、リリースの可否、撤退の判断 | 出せない | 決定の責任が社外に移り、社内に判断の基準が残らない |
| ② 材料をつくる | ユーザー調査、競合の整理、データ分析、仮説の言語化、要件の素案、ロードマップのたたき台 | 出せる | 事業の文脈が伝わっていないと、使えない材料が上がる |
| ③ 進める | 仕様の確定、開発チームとの調整、進捗の管理、リリース準備、関係部署への説明 | 出せる | 決定の背景を知らないまま進むと、細部で意図がずれる |
ここで確かめてほしいのは、兼務者の時間が実際にどこへ使われているかです。多くの場合、①に使えている時間はごくわずかで、大半は②と③に消えています。調査、会議、仕様の詰め、関係者への説明。どれも必要ですが、その人でなければできない仕事ではありません。
だから、②と③を外に出します。すると①に使える時間が戻ります。①は兼務者が持ち続けられるので、意思決定の質は落ちません。
これが、採用が決まるまで事業を止めずにおく方法です。同時に、求人票を書き直す時間も生まれます。②③を外に出したあとの求人票は、①を担う人材の要件になっているので、最初の全部入りより現実的な範囲に収まります。
外部人材を入れる型の違い
②と③を外に出すといっても、依頼先の型によって担える範囲が違います。
| 正社員採用 | エージェント経由の個人 | コンサルティングファーム | YOLOのプロダクトエージェンシー | |
|---|---|---|---|---|
| 立ち上がりまで | 数ヶ月〜半年 | 数週間 | 数週間 | 数週間 |
| 主に担える範囲 | ①②③すべて | ②③(人による) | ②が中心 | ②③と、①の材料づくり |
| 意思決定の所在 | 社内に移る | 社内に残る | 社内に残る | 社内に残る |
| ドメインの学習 | 時間をかけて蓄積する | 案件ごとに立ち上げる | 調査で補う | 事業会社での経験で立ち上がりが早い |
| 知見の残り方 | 社内に蓄積される | 契約終了とともに離れる | 成果物として残る | 内製化を前提に、進め方ごと渡す |
| 噛み合う場面 | 中長期の中核を置きたい | 範囲が明確な作業がある | 戦略の整理から必要 | 採用が決まるまで事業を止めたくない |
正社員採用は、中長期でプロダクトの中核を置くなら最も確実です。知見が社内に残り、意思決定そのものを移せます。時間がかかるという一点を除けば、本命の手段であることは変わりません。
エージェント経由で個人に依頼する型は、範囲が明確な作業を切り出せるなら合理的です。コンサルティングファームは、事業戦略の整理から必要な局面で力を発揮します。
費用の目安も見ておきます。業務委託のPdMの単価は、平均で月79万円、最も高い案件で月150万円という集計が公開されています。プロダクトの計画からグロースまで一貫して担う案件では、月90〜120万円という水準も示されています。
判断の分かれ目は金額ではなく、いつから動き出せるかと、終わったあとに何が残るかです。
YOLOがプロダクト人材を出せる理由
進め方を掲げるだけなら誰にでもできます。実行できるかどうかは、誰が来るかで決まります。
YOLOのプロダクトエージェンシーには、事業会社で自社プロダクトの開発とグロースを経験したメンバーのみが在籍しています。受け身で指示を待つのではなく、不確実性の高い現場で自分から論点を立てられることを条件にしています。
これが実務で効くのは、次の場面です。
- ②の材料をつくる場面 — 事業側の狙いが読めるため、意思決定に使える形で材料が上がる
- ③を進める場面 — 決定の背景を理解したうえで動けるので、細部で意図がずれない
- 引き渡しの場面 — 内製化を前提に、判断の基準ごと渡せる
これを支えているのが体制です。経営陣がスタートアップで積み上げたネットワークからリファラル中心で採用しているため、市場に出てこない層に接点があります。また、自社の開発事業で使っているフレームやワークフローを各メンバーに提供し、個人の力量だけに依存させない仕組みを用意しています。
実際の支援でも、株式会社LabBase様では内製化を意識して社内のPMの方と伴走しています。株式会社フォトシンス様では入退室管理システムの新規Webアプリケーション開発を担当しました。ほかの事例はプロダクト開発のページに掲載しています。
採用と外部活用、どちらに寄せるかを決める前に
社内で先に確認しておくことを挙げます。求人媒体を増やす前に、ここを見たほうが早く動きます。
- 兼務者の時間が、①②③のどこに何割使われているかを書き出したか
- ①のうち、本当に社内でなければ決められないものはどれかを特定したか
- ②③のうち、いますぐ外に出せるものはどれかを決めたか
- 意思決定の権限を、採用後に誰へどこまで渡すかを決めているか
- ドメイン知識を渡す時間を、兼務者のカレンダーに確保しているか
- 現在の求人票が、①を担う人の要件になっているか(②③が混ざっていないか)
このうち最初の1つ、兼務者の時間の内訳を書き出すことが最も効きます。ここを見ずに要件を緩めると、今度は「誰を採ればいいのか分からない」状態になります。
まとめ
- PdM不足に採用だけで対処すると、効き始めるまでの時間と、事業が止まっている時間が合わない
- 求人票が広くなるのは、いま兼務している本人が要件を書いているから。結果として市場に存在しない人を定義してしまう
- 仕事を①決める/②材料をつくる/③進める に分解し、②③を外に出すと、①に使える時間が戻る
YOLOでは、プロダクトエージェンシーとして②③を担うメンバーを1人からアサインしています。開発そのものを含めて任せたい場合の進め方はプロダクト開発に、依頼先の選び方の考え方はPoC開発の会社選びにまとめました。
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