プロダクト開発

UXデザインの外注費用は、成果物の定義で決まる

UXデザインの外注費用を調べると、会社ごとに提示されている金額の幅が大きすぎて、そのまま予算の根拠にはできません。同じ「UXデザイン」という言葉でも、指している作業の範囲が揃っていないためです。

この記事では、金額が開く理由と、費用を実際に動かしている要素を整理します。結論を先に書くと、費用は画面数やデザイナーの単価よりも「何を成果物と決めたか」と「デザインをいつ検収するか」で決まります。

UXデザインの外注費用は、なぜここまで開くのか

公開されている金額を並べると、次のようになります。

出典提示されている金額
アームアプリ・SaaSのUIデザイン:10画面前後で90万円〜/20画面以上で250万円〜(税別・2026年8月時点)
ペンタゴンアプリのデザイン外注:100〜300万円。制作予算全体の20〜30%
LASSICリサーチから情報設計・デザインシステムまで一括:数百万円〜1,000万円以上

10画面で90万円という提示と、一括で1,000万円以上という提示が、同じ「UI/UXデザイン」という言葉で並んでいます。

これはどれかが不正確なわけではありません。「UXデザイン」と呼んでいる作業の範囲が、書き手ごとに違うだけです。画面のデザインデータだけを指す場合もあれば、ユーザー調査から運用のルールづくりまでを含む場合もあります。

だから相場を集めても、自社の予算には翻訳できません。範囲を決めるのは発注側の仕事だからです。

費用を分けているのは「どこまでを成果物とするか」

Webサイト制作なら「ページ数」という共通の単位があります。UXデザインにはそれがありません。作業が3つの層に分かれていて、どの層まで買うかで桁が変わるためです。

成果物になるものここで決まること
調査インタビュー記録、課題の整理、ジャーニーマップ誰の、どの課題を解くのか
設計情報設計、画面遷移、ワイヤーフレーム、プロトタイプどういう手順で解くのか
UI画面デザイン、デザインシステムどう見えるか、どう実装するか

見積もりを比較できないときは、たいてい各社が違う層を見ています。A社は設計から、B社はUIだけ、C社は調査を含む。金額だけを横に並べても意味がありません。

先に決めるべきは、どの層が自社に足りていないかです。解くべき課題がすでに定まっているなら調査は要りません。逆に、課題が曖昧なままUIだけを外注すると、きれいな画面が、間違った前提の上に載ります。

工程ごとに、何にお金がかかっているのか

工程別の目安を見ると、金額の性格が違うことが分かります。

金額として大きいのはUIです。画面数に比例するので、積み上げれば数百万円になります。

ただし見積もりと実績がずれる原因は、UIではなく調査と設計にあります。ここが薄いまま画面デザインに入ると、作りながら前提が変わり、描き直した分が追加費用として乗ります。画面単価を値切っても、この構造は変わりません。

費用が跳ねる原因は、デザインと実装を分けたこと

UXデザインの外注には、Web制作にはない固有の落とし穴があります。契約が「デザインデータの納品」で終わることです。

Figmaのファイルを受け取った時点で検収し、そこで支払いが完了する。一見すると明快です。しかしデザインが正しかったかどうかは、実装されて人が触るまで誰にも分かりません。検収の時点では、まだ何も確かめられていないのです。

実装が始まると、必ず次のようなものが出てきます。

  • 例外状態が描かれていない — 通信エラー、読み込み中、データが0件、権限のない利用者に何を見せるか
  • 実装コストが合わない — 動きは美しいが、その挙動のために必要な工数が予算に収まらない
  • データ構造と噛み合わない — 画面が前提にしている情報を、システムが持っていない

このとき修正を頼めば、契約は終わっているので追加費用になります。頼まなければ、開発側が判断して埋めることになり、デザインの意図はそこで途切れます。どちらを選んでも、当初の見積もりからは外れます

つまり手戻りは、デザイナーの力量の問題ではありません。デザインの検収を、実装より前に置いた発注の構造から生まれています。

費用を本当に左右しているのは、単価でも画面数でもなく、デザインが正しいかどうかを、いつ、何で判定すると決めたかです。

依頼先の型による、費用の決まり方の違い

同じUXデザインの外注でも、依頼先の型によって費用の決まり方そのものが変わります。

デザイン制作会社フリーランスのデザイナー開発会社のデザイン込みYOLOのプロダクト開発
見積もりの起点画面数と工程稼働時間、または画面数開発工数に含める何を確かめれば判断できるか
成果物デザインデータデザインデータ実装されたシステム検証が回る状態のプロダクト
実装との関係実装は発注側が別途手配同じく別途手配同一社内で完結設計者が実装の判断まで持つ
例外状態の扱い依頼範囲に入っていれば作る都度相談開発側の判断で埋まりやすい設計の時点で仮説と一緒に決める
仕様が変わったとき追加費用として計上都度見積もり変更管理として計上検証結果として織り込む前提で設計する
噛み合う場面見た目の刷新が主目的範囲が明確で小さい要件が固まっている何を作るかがまだ決まっていない

デザイン制作会社に依頼する型は、ブランドや見た目の刷新が目的なら合理的です。表現の水準を上げることに特化した体制だからです。フリーランスへの依頼も、範囲が明確なら費用対効果は高くなります。開発会社にまとめて任せる型は、要件が固まっている案件では手戻りが最も少なくなります。

問題は、UXデザインを外注したくなる場面の多くがそのどれでもないことです。「どう見せるか」より前に「何を作るか」が決まっていない。この状態で、要件が固まっている前提の見積もりを取ると、差分がそのまま追加費用になります。

YOLOがデザインを単体の納品物として切り出さないのは、この不一致を最初に解消するためです。確かめたいことが1つに定まれば、描くべき画面は自動的に絞られます。

YOLOがUXデザインを実装と切り離さずに進められる理由

進め方を掲げるだけなら誰にでもできます。実行できるかどうかは体制で決まります。

YOLOは制作会社ではなく、UXデザインとプロダクトマネジメントに専門性を持つProduct Evolution Studioです。メンバーは事業会社で自社プロダクトの開発とグロースを経験しており、発注側として意思決定をしてきた人間が設計に入ります。

これが実務で効くのは、次の場面です。

  • 描く範囲を絞る場面 — 事業側の狙いと技術的な制約の両方が見えるため、描かない判断ができる
  • 例外状態を決める場面 — 実装とデータ構造を前提にできるため、後から埋める作業が減る
  • 引き渡しの場面 — 内製化を前提に、判断の基準ごと渡せる

実際の支援でも、株式会社ダンダダン様では顧客LTVを最大化する新規モバイルアプリの開発と事業検証を担当し、アプリを通したユーザー体験最大化のための店舗オペレーション構築とグロース支援まで行いました。株式会社LabBase様では内製化を意識して社内のPMの方と伴走しています。ほかの事例はプロダクト開発のページに掲載しています。

きれいな画面が納品されても、事業の判断材料は増えません。確かめられる状態にすることが目的です。

見積もりを取る前に決めておくこと

複数社に相談するなら、次の3つを先に決めます。決まっていない見積もりは、そもそも比較できません。

  1. どの層を外に出すか

    調査・設計・UIのうち、自社に足りていないのはどれか。全部を頼むのか、設計から先だけなのかを決める。

  2. 誰が実装するか

    自社の開発チームか、別の開発会社か、同じ相手か。実装の担い手が決まっていないと、例外状態の責任範囲が宙に浮く。

  3. どこで正しさを判定するか

    デザインデータの納品時点か、実装して人が触った時点か。ここを納品時点に置くなら、その後の修正費用を最初から見込んでおく

そのうえで、見積書では次を確認します。

  • 調査・設計・UIのどこからどこまでが金額に含まれているか
  • 例外状態の画面が、依頼範囲に入っているか
  • 実装中の質問対応や仕様調整が、含まれるか別料金か
  • デザインデータの権利と、その後の改変が自社でできるか
  • 仕様が変わった場合の追加費用の扱い

このうち2つ目の例外状態は、見積書に書かれないまま揉めることが最も多い項目です。依頼前に一度確認しておくだけで、後の費用は変わります。

まとめ

  • 公開されている相場は「UXデザイン」の範囲が揃っていないため、そのまま予算にはできない
  • 費用を分けているのは画面数ではなく、調査・設計・UIのどこまでを成果物と決めたか
  • 追加費用の多くは、デザインの検収を実装より前に置いた構造から生まれる

YOLOでは、プロダクト開発の支援を、デザインと実装を切り離さない形で行っています。費用の決まり方をMVPの側から見た整理はMVP開発の費用に、依頼先の選び方はMVP開発の会社選びPoC開発の会社選びにまとめました。

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