プロダクト開発
MVP開発の会社選びは、「作らない」と言えるかで決まる
MVP開発を任せる会社を探すと、「おすすめ◯選」の比較記事が並びます。ところが何本読んでも、自社に合う一社は決まりません。
この記事では、比較記事からは見えない選び方を整理します。結論を先に書くと、見るべきは実績数でも技術力でもなく、「それは作らないでおきましょう」と言える仕組みがあるかです。
MVP開発の会社を、比較記事で選べないのはなぜか
比較記事が役に立たないわけではありません。候補を集める道具としては有効です。ただ、そこから一社を選ぶ材料にはなりません。理由は3つあります。
- 掲載の基準が記事ごとに違う。 何をもって「MVPに強い」としているかが書かれていないことが多い
- 実績の数は、検証の質を表さない。 何件作ったかは分かっても、そのうち何件が次に進んだかは分からない
- どのリストにも同じ会社が並ぶ。 差がつかないので、結局は費用と規模で比べることになる
比較記事は候補を10社に絞るところまでは進めてくれます。その先の判断材料は、自分で持つしかありません。
では何を材料にするか。それを決めるには、MVP開発でいちばん多い失敗を先に見ておく必要があります。
MVPのはずが、小さい本開発になっていく
いちばん多い失敗は、技術的な失敗ではありません。機能が増え続けることです。
koromoは、ユーザー登録・検索・メッセージの3機能でMVPを定義したはずが、議論を重ねるうちに決済・レビュー・通知・管理画面が積み上がり、機能が20を超えて9ヶ月・600万円規模の「ミニ本実装」になった例を挙げています。
この事例で注目したいのは、増えた機能のどれもが、その場では正しく見えていることです。
- 「決済がないと、そもそも使ってもらえない」
- 「管理画面がないと、運用が回らない」
- 「競合サービスにはある機能なので、無いと比較されたときに弱い」
どれも間違ってはいません。ひとつずつ見れば全部もっともです。だから会議では通ります。そして半年後、当初の目的だった「早く出して反応を見る」が失われています。
最初に決めた範囲は、放っておくと必ず広がります。 問題は、広がったときに誰が止めるのかです。
なぜ誰も「作らない」と言えないのか
ここが構造の話になります。
機能を増やす提案には、それを言う理由があります。事業側は不安だから足したい。開発側は求められたものを断る理由がない。しかも受託開発では、作る量が増えれば売上も増えます。
一方で「それは作らないでおきましょう」と言う側には、誰も得がありません。発注側が言えば、社内から「なぜ削るのか」と問われます。開発側が言えば、売上が減るうえに、後で問題が起きたときの責任を負うことになります。
つまり、増やす方向には全員に理由があり、減らす方向には誰にも理由がない。これがMVPの範囲が広がる本当の原因です。
誤解のないように書いておくと、これは開発会社の姿勢の問題ではありません。契約がそういう形になっているだけです。請負契約は、決まったものを決めた金額で正確に作るための仕組みで、そこには十分な合理性があります。ただ、作るものがまだ決まっていないMVPの段階とは、前提が噛み合いません。
だから会社を選ぶときに聞くべきは、「一緒に考えてくれますか」ではありません。ほとんどの会社が「はい」と答えます。聞くべきは、作らないと決める場面がどこに用意されているかです。
MVP開発の会社を選ぶときに見る4つのこと
比較記事の代わりに、次の4点を見ます。どれも初回の商談で確認できます。
| 見るところ | 望ましい状態 | 確認が必要なサイン |
|---|---|---|
| 「作らない」と決める場面 | どの会議で、何を根拠に決めるかが決まっている | 「ご要望に応じて柔軟に対応します」だけで、決める場が無い |
| 仕様が変わったときの扱い | 変わる前提で、扱い方が契約に書かれている | 契約書に「別途協議」としか書かれていない |
| リリースしたあとの判断 | 何を見て、伸ばすか・やめるかを一緒に決める | 納品で終わり、その後は別案件として扱う |
| 終わったあとに残るもの | コードと、判断の基準が自社に残る | 引き継げる形で渡す前提が無い |
このうち最初の1つが決定的です。「作らない」と決める場面が用意されていない限り、残り3つは形だけになります。
たとえば週次の打ち合わせで「今週決めること」が事前に置かれているか。仮説に対して要る機能・要らない機能を並べて判断する場があるか。こうした運用が最初から組み込まれている会社は、機能が増え始めたときに気づけます。
見積書と契約書の、どこを読むか
商談で「柔軟に対応します」と言われたことが、書面でどう表現されているかを確認します。ここが実際の運用を決めます。
-
変更管理の条項
仕様が変わったときの扱いが書かれているか。「別途協議」だけなら、実際には毎回の交渉になります。変更を織り込む前提の契約なら、判断の手順まで書かれています。
-
検収の定義
何をもって完了とするか。「仕様書どおりに動くこと」なのか、「検証できる状態になること」なのか。前者だと、動くが判断材料にならないものでも検収は通ります。
-
著作権と引き渡し
コードとデザインデータの権利が自社に来るか。来なければ、次の段階で別の会社に引き継ぐことも、自社で続けることもできません。
-
運用の範囲
リリース後の不具合対応、サーバー費用、軽微な修正がどこまで含まれるか。MVPは出したあとに手を入れる前提なので、ここが別料金だと総額が変わります。
見積書の金額だけを横に並べても比較になりません。同じ金額でも、上の4つが違えば買っているものが違います。
依頼先による、機能の増え方の違い
依頼先の型によって、機能が増えたときの挙動が変わります。
| 一般的な受託開発 | ラボ型・準委任 | ノーコード/フリーランス | YOLOのプロダクト開発 | |
|---|---|---|---|---|
| 契約の形 | 請負が中心 | 準委任 | 案件により異なる | 準委任を前提に、検証の単位で区切る |
| 機能が増えたとき | 追加見積もりと変更契約 | 稼働の範囲に吸収される | 都度見積もり | 検証に要るかで判断し、要らなければ作らない |
| 「作らない」と言う人 | 発注側が言うしかない | 決める人が曖昧になりやすい | 発注側が言うしかない | 進行役が仮説を根拠に提案する |
| リリースしたあと | 別案件として見積もる | 稼働を継続する | 都度対応 | 伸ばすか、やめるかの判断まで一緒に置く |
| 噛み合う場面 | 要件がすでに固まっている | 手を動かす人が長く要る | 作るものが決まっていて小さい | 何を作るかがまだ決まっていない |
一般的な受託開発は、要件が固まっている案件では最も確実です。決まったものを決めた金額で作る体制なので、予算の見通しも立ちます。ラボ型は、継続的に手を動かす人が必要な局面で機能します。ノーコードやフリーランスへの依頼も、作るものが小さく明確なら費用対効果が高くなります。
問題は、MVPを作りたい会社の多くがそのどれでもないことです。何を作るかがまだ決まっていない。この状態で、決まっている前提の契約を結ぶと、決まっていない分がそのまま追加費用と遅延になって現れます。
YOLOが「作らない」と言える理由
進め方を掲げるだけなら誰にでもできます。実行できるかどうかは体制で決まります。
YOLOは開発会社ではなく、UXデザインとプロダクトマネジメントに専門性を持つProduct Evolution Studioです。メンバーは事業会社で自社プロダクトの開発とグロースを経験しており、発注側として「何を作らないか」を決めてきた人間が進行に入ります。
これが実務で効くのは、次の場面です。
- 機能を足したくなる場面 — 何を確かめたいかに立ち返って判断できるため、要らないものを要らないと言える
- 社内から要望が来る場面 — 断る理由ではなく、いつ作るかの順番として示せる
- 引き渡しの場面 — 内製化を前提に、判断の基準ごと渡せる
実際の支援でも、株式会社ダンダダン様では顧客LTVを最大化する新規モバイルアプリの開発と事業検証を担当し、アプリを通したユーザー体験最大化のための店舗オペレーション構築とグロース支援まで行いました。株式会社LabBase様では内製化を意識して社内のPMの方と伴走しています。ほかの事例はプロダクト開発のページに掲載しています。
作る量を減らすことが目的ではありません。早く出して、判断できる状態にすることが目的です。
まとめ
- 比較記事は候補を集める道具であって、そこから一社を選ぶ基準にはならない
- MVPで最も多い失敗は機能が増え続けること。増やす側には理由があり、減らす側には誰にも理由がない
- 選ぶときは実績数ではなく、「作らない」と決める場面が進め方と契約に用意されているかを見る
YOLOでは、プロダクト開発の支援を、何を作らないかを決める段階から行っています。費用がどう決まるかはMVP開発の費用に、決める役割が社内にいない場合の考え方はPdM不足と求人票の問題にまとめました。
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