プロダクト開発
飲食店のアプリが使われない原因は、通知ではなく店の中にある
公式アプリを出したものの、ダウンロードが伸びない。入れてくれたお客様も、二度目を開いていない。この記事は、飲食チェーンの本部でアプリの数字を見ている方に向けて書いています。
結論を先に書きます。飲食店のアプリが使われない原因は、通知の頻度でもクーポンの中身でもなく、店の中に「それを使う場面」が作られていないことです。
先に答え。使われない原因は、店の中にある
アプリが使われていないと分かったとき、最初に手を入れる場所はだいたい決まっています。通知の回数を増やす、クーポンの割引率を上げる、画面を作り直す。どれも管理画面から触れるので、すぐ着手できます。
着手できる場所から順に直していくと、たいてい一巡して同じ場所に戻ります。 お客様がアプリを開くかどうかは、スマートフォンの中ではなく、店に入って席に着き、注文して会計するまでのあいだに決まっています。そこに開く理由が置かれていなければ、通知は届いても押されません。
通知を直しても、使われない状態は止まらない
まず、断られる理由を見ます。MMD研究所の調査では、店舗の公式アプリを知っていて入れなかった経験がある人のうち、その理由として最も多かったのは「アプリの利用頻度が低そうだから」で50.7%でした。2番目は「スマートフォンのストレージ容量が減るから」の24.4%、「通知が煩わしそうだったから」は18.0%で3番目でした。
断られている理由の一番は、煩わしさではなく「使う場面が思い浮かばない」ことです。 通知を減らしても増やしても、ここは動きません。
次に、一度入れたあとに消される理由です。Repro株式会社が一般の小売店のアプリについて調べた結果では、消した経験がある人は67.8%、その理由の最多は「店舗を使う機会が減った」で64.3%でした。
こちらも、アプリの中の不満ではありません。店に行かなくなったから消されています。 逆に言えば、来店のたびに開く理由があるアプリは、消される対象になりにくくなります。
どちらの調査も、飲食店だけを対象にしたものではありません。店舗の公式アプリ全般の傾向として見てください。それでも、直す場所が管理画面の中にないことは共通しています。
お客様がアプリを思い出すのは、店員の声掛けとレジの前
同じMMD研究所の調査に、答えに近い数字があります。店舗の公式アプリを「思い出したら使っている」と答えた116人に、思い出すきっかけを1つだけ選んでもらった結果です。
| 思い出すきっかけ | 割合 |
|---|---|
| 店員の声掛け | 23.3% |
| 店内ポスター・チラシ | 18.1% |
| レジ周辺のPOP | 17.2% |
出典はMMD研究所の店舗公式アプリ利用に関する意識調査です。回答者が116人と少ないため、順位をそのまま自店に当てはめるのは避けてください。それでも上位3つが全部「店の中」であることは、傾向として受け取れます。
思い出す場所が店の中なら、使われるかどうかを決めているのは店の段取りです。声を掛ける人がいるか、掛ける余裕がある時間か、掛けたあとに1秒で終わる操作か。ここが通っていないうちは、機能を足しても開く理由は生まれません。
店の中でアプリが止まる3つの場面
現場で実際に起きているのは、次のような場面です。
- ピークタイムに、案内する余裕がない。 入口に列ができている時間に、スタッフがアプリの説明を始めることはできません。いちばん来店が多い時間が、いちばん案内されない時間になります。
- 会計のときに、提示が間に合わない。 お客様が画面を探しているあいだ、レジが止まります。一度詰まると、次からスタッフは声を掛けなくなります。
- 新しく入ったスタッフが、説明できない。 入って数日の人に、アプリの段位やポイントの仕組みまで覚えてもらうのは無理があります。説明できる人が出勤している日だけ案内される状態になります。
3つとも、アプリの機能の問題ではありません。アプリを使わせる手間を、いちばん忙しい人に預けてしまっているという構造の問題です。
だから、直す順番はこうなります。先に店の段取りのどこに差し込むかを決めて、そこに収まる形だけを作る。 逆にすると、店で使えないものが残りやすくなります。
何を作るかを決める3つの型を比べる
立て直す手は、大きく3つです。通知の配信を強める。機能を足す。店の使う場面から決める。 どれが優れているという話ではありません。効く前提が違うだけです。
| 見る軸 | 配信 | 機能 | 店の場面 |
|---|---|---|---|
| 何を直すか | 通知とクーポン | 画面と機能 | 使う場面 |
| 効く場面 | 使う人がいる | 不足が明確 | 使う理由が無い |
| 現場の手間 | 変わらない | 増える場合も | 先に考える |
| 結果が出るまで | 配信のあと | 作ったあと | 作る前 |
いちばん右の列が、この記事の主題です。使われていない状態からの立て直しでは、店の側から決めたほうが早いです。 使う人がすでにいるなら、左の2つのほうが早く効きます。
同じ「店から決める」でも、誰がそれを決めるかで結果は変わります。
| 誰が決めるか | 決め方 |
|---|---|
| 一般的な受託 | 本部が出した要件どおりに作る |
| YOLOの進め方 | 店に立ってから決め、使われないものは作らない |
要件を受け取って作る形では、その要件が店で通るかどうかを確かめる工程がどこにも入りません。会議室で合意した機能は、合意したまま出来上がります。使われるかどうかが分かるのは、出したあとです。作るかどうかの判断が何で決まるかは飲食店のアプリを自社開発すべきかは、店舗数と課金の仕組みで決まるにも書いています。
なぜYOLOがこの進め方を実行できるのか
店から決めると掲げるだけなら、誰でもできます。実行できるかどうかは体制で決まります。
代表の山崎は、別会社で飲食店を複数運営しています。ピークタイムに現場がどれだけ動けないか、スタッフにひと手間増やすことが何を意味するか。資料の上ではなく、店に立つ側の実感として分かります。だから要件を聞く前に店舗を見ますし、実際に案内する店長やスタッフに早い段階で触ってもらいます。
株式会社ダンダダン様では、顧客LTVを最大化する新規モバイルアプリの開発と事業検証を担当しています。一度きりの来店で終わらせず、通い続けてもらうための仕組みです。あわせて、アプリを通したユーザー体験最大化のための店舗オペレーション構築とグロース支援も担当しました。アプリを納めるところで終わらせず、店の段取りまで同じ範囲で扱っています。
体制はPM1名・デザイナー1名・エンジニア3名の5名、期間は半年です。累計43万ダウンロードを超えました。来店1〜3回のライトユーザーがリピーターに変わる導線ができ、アプリの推奨を通じて、各店舗の接客サービスが改善しています。詳しくはダンダダン様の事例にまとめています。
案内する側の負担を減らすことと、お客様が開く理由を作ることは、同じ設計の中にあります。 別々に進めると、どちらも途中で止まります。進め方は飲食店向け開発に、依頼先に「作らない」と言える仕組みがあるかはMVP開発の会社選びは、「作らない」と言えるかで決まるに書いています。
まとめ
- 飲食店のアプリが使われない原因は、通知やクーポンではなく、店の中に使う場面が無いこと。断られる理由の一番は「使う場面が思い浮かばない」だった
- お客様がアプリを思い出すきっかけは、店員の声掛け・店内の掲示・レジ周辺。決めているのは店の段取りである
- 立て直すときは、店の段取りのどこに差し込むかを先に決めて、そこに収まる形だけを作る。逆にすると、店で使えないものが残る
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